おじいさんが、 サミーを つれてきてから、 ずいぶん たつわ。 すいせんの はなが かれてしまって、 ヒヤシンスも おわって、 すっかり あたたかく なってきました。 きょねん きゅうこんを うえた ピンクの チューリップが はなざかりになって、 デルフィニウムや ルピナスまで さいてきたと いうのに、 おじいさんは もどってこないのよ。

そういえば、 サミーが うちに きたひの ママの はんのうが おもしろかったわ。 わたしが サミーを あずかりたいって いうと、 ママは、 いっしゅん ぽかんとして、 それから いっしゅん おこったような むずかしいかおをして、 それから げらげら わらいだしたの。 「ことわりたくても、 ことわれないじゃない、 こんな かわいい おさるさん。 アニカったら、 ママが おさるさん だいすきって しってた?」
サミーは、 さいしょは ちょっと さびしそうだったけど、 いまでは すっかり なかよしに なりました。 さっきも、 ふたりで、 どんどん ひらいていく はなを おいかけて、 おにわを ぐるっと まわってきたところよ。 サミーも はなが だいすきみたい。 ふたりとも しゅみが おなじで よかったわ。

ピンクや ブルー、 むらさきの はなが たくさん さいているにわは、 まるで ほうせきばこを ひっくりかえしたようよ。 ながめていると、 おとぎのくにに きたような なんだか うっとりと ねむたくなるような ふしぎな きぶんに なってくるの。
こんなとき、 わたしは ふと、 「やっぱり ようせいって いると おもうわ」と かんがえてしまいます。 きょねん としょかんで かりた ほんには、 きれいな はなが さいている にわに ちいさな いえを つくって まっていると、 ようせいが きてくれるって かいて あったのを おもいだしました。
「サミー、ようせいの いえを つくって みよう」。 サミーは、 わかったのか、 さっそく きのえだや はっぱを あつめはじめました。 そう、 ようせいの いえは、 しぜんに あるもので つくらなくては いけないのよ。 わたしは、 ようせいの いえの ゆかや げんかんの まえに しく ひらたい こいしを あつめてきました。

こえだを まんなかが とんがりぼうし みたいに なるように ぐるっと たてかけて、 まわりを はっぱで おおったら、 インディアンの テントみたいな かわいい こやが できました。 それだけだと さびしいから、 てっぺんに おれていた チューリップの はなを さしてみたら、 ほんとうに ようせいが きてくれそうよ。
いえを つくりおわってから、 かしの きのしたで、 サミーと おやつを たべました。 にわの ミントで つくった ミントの ソーダを のんで、 ねころびます。 あたたかい かぜが ふいて、 かしのきが さわさわと はっぱを ならしています。「きもちが いいわ。 うっとりするわね。 サミー」